《庭誉め

・お庭がよいとて 心そらすな

・黄金小草 足にからまる

・参り来て これのお庭を見申せば 四方四角で 桝形の庭

・四方四角で 桝形の庭

 

《中歌》

・沖風の そよりそよりと 吹く年は 今年の稲穂は 八穂で八石

・八穂で 八石取るならば これより南に 倉七棟

・中立や 腰に差したる しだれ小柳

・山雀は 山より離れて 八つ連れて この庭よいとて 羽を休めろ

・白き雀が 八つ連れて これのお庭に 羽を休めろ

・中立や 中から入れろ 中立なければ 中がすき候

 

《鹿の子》

・朝草の桔梗や小花 刈り混ぜて これのお馬屋 花で輝く

・おもれ木の みつある枝に 花が咲く水の上に 花が散り候

・さしかさは 心棒のろくろ 駒かけておししおされ 駒の折り膝

・向かい小山の 白百合の花 つぼんで開く そよとふぐるる

・天竺の星の並び 面白や 七曜も九曜も 遊べ友達

・壁こしに よくよく聞けば 面白やつづみと太鼓 いつも絶えさず

・ここは松山 小松山 松の見こし いずる月かな

・忍ぶかご山 富士の山 花ふき散らし 遊べ友達

・我妻は 奥の深谷に いたとは聞く 便りをやれよ 文の指し添え

・鶯は 沢の桜に 巣をかけて 巣をば引かれ 桜みろ

・十七の枕の下の 玉手箱今朝よくみたよ 恋のたまぐさ

 

《引派》

・十五夜の月の色は まん丸にてそれを見それ 引けや我が連れ

・十七はとまれとまれと 袖を引くお引き換えし いそぐ袖かな

・つばくらのとんぼ返し 面白や羽先を揃え きりを返せや

・猪の獅子鹿の獅子踊り出て 田舎の獅子と 肩を揃えた

 

《鉄砲踊り》

・この里は 山立里と 申せばや ご油断なされて 撃たれ給うな

・友鹿を 一つ撃たれて 泣くな騒ぐな 池のおしどり

・この里に いかなる山立 忍び来て 幼き鹿の 心騒がす

・山立は 鹿よ鹿よと 狙えども 鹿がさとくて 撃つに撃たれず

・山立は 弾も薬も 尽き果てて 心静かに 遊べ友達

・天竺の岩が崩れて かかるとも心静か 遊べ友達

 

《案山子》

・あれに 見えるは 猟師か案山子か ご油断なされて 撃たれ給うな

・天竺の 白山林の むら笹を これに下ろして 竹と読み候

・その竹を 鹿の案山子に 立てられて それに恐れて 後に引き候

 

《女鹿取り》

・女鹿取られて 気が付いたここで一つ 狂い獅子かな

・笹の中なる 女鹿をば何としても 隠し置かれた

・唐金を剣につくり 名を付けて雄獅子雌獅子 あいを切らばや

・まご山に 松を植え手をつけて 松にからまる 蔦をきらばや

・遠沢港のふんだて川原 今こそ入れろ 船の櫓拍子

 

《波合わせ》

・七九しの竹山千竹小風にもまれ節は揃わず

・桜木の池にこそ勘治がかけた金のそり橋

・天竺のあい染め川の真やる菊さ結び結び合わせろ

・天竺の梅と桜咲き乱れ散るより忘れ知る様忘れず

 

《かしは引き》

・かしはより音が来た我等もかしはかしは引き候

 

《唐金狂》

・沢を上りのくつわ虫鳴りを沈め沈む音聞け

・唐金を剣につくり名をつけて雄獅子雌獅子あいを切らばや

・笹の中なる雌獅子を何としても隠し置かれた

 

《つるみ狂》

・我が殿は奥山に鳴りを沈めしずむ音聞け

・一足跳ねろやキリギリス続いて跳ねろや綾のはたおり

・獅子と付ければ頭を振る兎と付ければ三跳び跳ね候

 

《三人狂》

・春駒は庭の桜に繋がれて駒が勇む花が散り候

・会津中山越しかねて小蹄をそらし勇む駒かな

 

《四人狂》

・春駒は庭の桜に繋がれて駒が勇む花が散り候

・天竺の岩が崩れて かかるとも心静か 遊べ友達

 

《各誉歌》

※ご馳走を頂く際

・連れ連れや何と食べたや此のご酒数々下した加賀の菊酒

・天竺の天野葉室走らせて我らに座れと過分なるもの

・穀米を搗いて表して湯で染めて我らに上がれと過分なるもの

 

※供養誉

・参り来てこれの供養見申せば如何なるお人の書筆かな弘法大師の走り筆かな


※宿場誉

・参り来てこれの船宿見申せば縦は十五里横七里入派よく見て出派に迷うな

 

※御寺石門誉

・参り来てこれの石段見申せばごんが川原の御影石これに下してこれの門となし給う

 

※山門誉

・参り来てこれの山門見申せば門の笠木に何がある瑠璃が巣を掛け如何なる闇夜も月と輝く

 

※石段誉

・参り来てこれの石段見申せばごんが川原の御影石これに下してこれの石段となし給う

 

※墓誉

・十七の御墓参りに行く時は見るより早く濡るる袖かな

・昨日まで花と見られし十七は今日来てみればこれの位牌となり給う

位牌の文字を眺むれば涙流れて読むに読まれず

・恋しきお人の墓印見るより早く濡るる袖かな

・死出の山路を如何なる行者道踏みそめたや行く人あれど帰る人なし

・御山のもみじ踏み分けてこれの位牌拝み申しぞよ

 

※水

・極楽の前の七瀬川その水汲みて水と給うける

※灯

・岩谷たま谷は暗けれど灯を立てさせ浄土なるもの

※花

・極楽の壺の植木に何がなる南無阿弥陀仏の六字なるもの

※香

・香の煙は細けれど天に上りてむら雲となる

 

※釣鐘堂誉

・参り来てこれの釣鐘堂見申せば昔よりくどくの為に掛けおかれ国を響かし鐘の音

 

※位牌誉

・参り来てこれのすみ段見申せば黄金の位牌がお立ちある位牌の文字を眺むれば

涙が流れて読むに読まれず

 

※和尚様誉

・参り来てこれのご法上見申せば紫衣に綿姿の袈裟掛けてお手に数珠持ち立たる姿は

阿弥陀如来

 

※お寺誉

・参り来てこれのお寺を見申せば三面垂木に小萱萱葺

・小萱の上には松は目出たや

・参り来てこれのお寺を見申せば飛騨の匠が仕組み来て萬代の大工が建てたや

・参り来てこれのお寺を見申せば三面垂木に黄金こけら葺き

 

※門誉

・参り来てこれの御門を見申せば白金扉に関のかんぬき

・白金扉に関のかんぬき

 

※蔵誉

・参り来てこれのお蔵を見申せば七福神のお酒盛りかな

 

※馬屋誉

・参り来てこれのお馬屋を見申せば鼻皮揃えて名馬七匹

・七匹の中に立ちたる鹿毛の駒御所壇に昇らんと脚かきする

 

※露地誉

・参り来てこれのお露地を見申せば飛び石跳ね石重ね石さても見事なお露地かな

 

※池誉

・参り来てこれのお池を見申せば岩に這え松しだれ小柳さても見事なお池かな

 

※家柄誉

・参り来てこれのお屋敷見申せば南表に建てたお屋敷

・八つ棟造りに小萱萱葺

・小萱の上に松は目出たや

・参り来てこれのお屋敷見申せば八つ棟造りに黄金こけら葺き

 

《謝礼をもらう際》

・黄金小ぼんのその上に国の宝をるりそえて我等に下さる過分なるもの

・おそれながらも手に取りて我等が戻りの土産なるもの

 

《帰る際》

・我が里に雨が降るかや雲が立ち一礼申して立てや我が連れ

 

《お立合い》

・此の里に獅子の先生あると聞き若輩せがれを引き連れて諸事の諸難御免ますませ

・あの里に獅子の先生あると聞く若輩せがれを引き連れて諸事の諸難御免ますませ